遺産相続がトラブルになる事例とは?揉め事を避けるための方法を解説
遺産相続が起こると、相続人らの間でトラブルが発生することが多いです。「相続が争続になる」、などとも一般的によく言われているところです。 遺産トラブルが起こるのは、どのようなケースが多いのでしょうか?また、相続トラブルが起こらないようにするにはどのような対処方法があるのかも知っておくと役立ちます。 そこで今回は、遺産相続がトラブルになりやすいケースと、揉め事を避けるための対処方法について解説します。
1.遺産の額は問題ではない
遺産トラブルが起こる事例というと、一般的には「高額な遺産があるケース」だと思われていることが多いです。 しかし、実際には遺産の額と遺産トラブルにはあまり関係がありません。 実際、遺産トラブルが起こって遺産分割調停が起こっているケースのうち、7割程度が遺産総額5000万円以下の事例ですし、1000万円以下の事例でも、3割程度になります。 このように、一般家庭であまり多額の遺産がないケースでも遺産トラブルは起こるので、対処を怠ってはいけません。
2.遺産の中に不動産が混じっていると、トラブルが起こりやすい
傾向的に遺産相続で揉め事が発生しやすいのは、遺産の中に不動産が含まれているケースです。不動産は、預貯金や現金のように単純に分割することができないので、取得する相続人が決まらずに問題になりやすいです。また、不動産を評価する方法は一律ではないので、どの評価方法を採用するかによって得をする人と損をする人が出てきます。そうなると、どのように評価するかで争いが発生します。 誰か1人が不動産を相続するなら代償金支払いが必要となりますが、不動産を相続する人に資力がなくて代償金が支払えない場合、やはり話がすすまなくなって争いになります。 誰も不動産の相続を希望しない場合には、不動産を売却して売却金を相続人間で分けることになりますが、この場合には、どの不動産業者に依頼するかとか、いくらで売却するかなどについて、もめてしまいます。
3.遺産争いのトラブル事例
(1)不動産の代償金支払いを巡ってトラブルになるケース
遺産トラブルで多い事例が、不動産の代償金支払いを巡ってトラブルになるケースです。具体的なケースをご紹介します。 父親が亡くなり、兄弟3人が相続人となりました。遺産内容は、自宅の不動産のみです。 長男夫婦は自宅において父親と同居していたので、自宅の取得を希望しましたが他の兄弟はそのための代償金支払いを求めました。 ところが、長男は「家を継ぐのだから代償金は要らないはず」「高額なお金は支払えない」と言って代償金支払いに応じず、トラブルになります。
(2)高額な生前贈与を受けた人がいるケース
被相続人の生前に、高額な生前贈与を受けた相続人がいる場合にも相続トラブルが起こりやすいです。 たとえば、母親が亡くなり、兄弟3人が相続人となっているケースで、長女が母親の生前に不動産の贈与を受けていたとします。この場合、兄弟は長女に特別受益があると主張しており、特別受益の持ち戻しを計算して、長女の相続分を減らすべきだと主張しました。しかし、長女としては「不動産については代金を支払っているので贈与ではなく、特別受益にならない」と主張しており、トラブルにしまいます。
(3)長年被相続人の介護をしてきた人がいるケース
相続人の中に、長年被相続人の介護をしてきた人がいる場合などにもトラブルが起こりやすいです。 たとえば、長男夫婦が長年母親と同居して、献身的に母親の介護を行ってきた場合に母親が死亡して、兄弟4人が相続人になったとします。このとき、長男は介護による寄与分を主張して自分の遺産取得分を多くすべきだと主張しましたが、他の相続人はこれを認めずに遺産トラブルになります。
(4)遺言書の内容が不公平なケース
遺言書があっても、その内容が不公平だと遺産トラブルになります。兄弟姉妹以外の法定相続人には最低限の遺産の取得分として「遺留分」があるため、遺留分を侵害したら遺留分減殺請求をされてしまうからです。 たとえば、父親が長男に全部の遺産を相続させるという内容の遺言書を書き残したとしても、次男や三男には遺留分があるので、相続開始後次男や三男が遺留分減殺請求をすると、長男との間で揉め事になってしまいます。
4.遺産トラブルを避ける方法
以上のような遺産トラブルを避けるためには、適切な内容の遺言書を作成することが役立ちます。はじめから遺言によってそれぞれの取得分を明らかにしておけば、遺産分割協議でトラブルになることはありません。 ただし、その際、それぞれの相続人の遺留分侵害が起こらないように、遺産の配分にも注意が必要です。 さらに、生前贈与や寄与分についても配慮をして、相続人らが不公平感を感じないような内容にしておく必要もあります。 このように、遺産トラブルを避けるためには、適切な内容の遺言書を作成しておくことが大切です。 自分では適切な遺言書の作成方法がわからない場合には、司法書士や弁護士等に聞くと有効なアドバイスをもらえるので、一度相談してみるとよいでしょう。